蚊 帳 の 夢

まだ少し肌寒い時期に骨董市で見つけた麻の蚊帳。

まだ一度も使ってないというとてもきれいな蚊帳。

赤色に黄の刺繍がすっと生える。

金色の金具はシャラシャラと鳴って、とても綺麗な音を出した。

今年の夏は蚊帳を使おう。

そんなわくわくと一緒に、蚊帳を押入にしまってから数ヶ月。

じりじりと日差しは強くなり、あるカラリと晴れた日に蚊帳を干した。


ぱさりと張られた蚊帳の中に

蚊がはいらないように

すばやくシャッと身体をすりこませた。

わざとらしいくらいに。

でもその仕草はなぜかとてもときめいた。

冬支度とはよく聞くけれど、これは夏支度。

むかしは障子をかえたり簾を下げたり

夏前にもやることがたくさんあったという話をよく聞く。

手間を楽しんで、夏を迎えるというのもいいもんだと思う。


ぷーんという蚊の音も恐くない。

ひさびさに布団もかけず

大の字になって寝ることにした。